ポートフォーリオも見れる写真展『殻を破るアート作品』レビュー

飯沢耕太郎さんによるレビューは、5月1日13時〜展示会場にて実施しました。

1.作家 : 神谷 孝信氏
 作品タイトル : この指とまれ
 内容 : 蝶を指に留めて、背景に世界遺産等を入れた世界で唯一の作品。
※飯沢耕太郎さんのコメント :
私も今まで見たことが無い写真なので、これ以上のショットが望めないなら、これで問題ないので、作品(集)として、魅力的に纏める工夫をするのが良いです。写真は素晴らしので自信を持って下さい。まず300枚程度を2Lで良いのでプリントして、トランプ見たいに、手に馴染ませ、写真を選び、並べる。これを繰り返すことが重要。なかには、大きなサイズで見せたいものも見つかる。視覚的に魅力ある纏め方をするには、一流のデザイナーと組むことが重要です。

2.作家 : 芦田 みゆき氏
 作品タイトル : ヒミツノハナゾノ
 内容 : 「ヒミツノハナゾノ」は写真と言葉による作品です。
<展示>と<書物>でひとつの作品と考えます。この度の展示とポートフォリオは、「ヒミツノハナゾノ」という作品のプロローグであり、制作を模索するための実験過程です。写真と写真、写真と言葉、現実と虚構、〝I〟と〝She〟(あるいは〝私〟と〝ミドリ〟)、内面と外界、プライベートと普遍、etc…一見相反する表現や出来事が、お互いがお互いを説明しあう関係となることなく、空間・行間に物語を出現させる、そのような作品を考えています。「ヒミツノハナゾノ」は自己再生の物語です。2008年、作品の原作となる詩「浅い森」のための、十二章から成るノートを書きました。「ヒミツノハナゾノ」はこの十二章のイメージを使って制作しています。
※飯沢耕太郎さんのコメント :
キーワード、キーイメージが重要です。トンネルの先は、見えないもの。今の表紙と裏表紙の写真2枚はいらない。言葉と写真を一緒に考え、一章でも、二章でも、書いて書いて、キーワードやキーイメージを探す。物語と自分との繋がり、肝になるところは、本当の事を入れて表現する。それが感動を覚える。そうやって作り上げて下さい。

3.作家 : 井上 和子氏
 作品タイトル : On the Street
 内容 : 私はstreet photographerで、主に街に出て、歩きながら被写体を見つけ、そこでカメラに収めます。何時も良い被写体に出会えるわけでもなく、只々無駄な日々を過ごす事が多いです。ある時は折角良い被写体を見つけてもそれを逃してしまい、悔しさで頭が一杯になり、持っていたエネルギー全てが失われていくのを感じます。計画したり、待ち構えたりして撮影するのでなく天気、光、時間、季節、偶然での出会いの中で撮っています。私にとってアートとは被写体から何かを感じ、それを表現し共有する事、文字や言葉では表現出来ないもの表現しようとするその熱意そのものだと思います。私の全ての作品は撮り直しが出来ない、又二度と出会う事のない唯一のものです。
※飯沢耕太郎さんのコメント :
構図や色味も良く、写真に力を感じる。テーマやストーリーを考える必要はありますが、この作品(集)は、悪くないと思います。写真を選ぶ中で、全体で何を伝えたいか、何を言いたいか、写真を串刺し、串と串の関連を考え、並び替えると素晴らし作品(集)になると思います。

4.作家 : Chino Kanetaka氏
 作品タイトル : throbbing
 内容 :『あ、また消える…』こんな感じで、1日1回気を失う、私にとって、これが日常のあの頃は、気を失う時以外でも、眠る時このまま寝てしまうと、そのまま目覚めないんじゃないかという恐怖、朝目覚めるとホッとするを繰り返す毎日を過ごしていました。気を失う頻度が増え病院で検査すると、脳から心臓へ動けの指令が届かなく、その時は、心臓が自力で鼓動を起こしていた。私の中の心臓は、まだ生きるんだ!と言っているかのように自力で鼓動をし続けている。
今回の作品は、throbbing、日本語では、鼓動、ときめき、ドキドキ。今回は、プリント2枚の間に空間を作り、違和感のある不思議な感じに仕上げました。観てくださる方に、いろんな角度から観て楽しんでもらえたら嬉しいです。
※飯沢耕太郎さんのコメント :
取り組もうとしているテーマは、とても良いので、作品(集)をひとつの音楽と考え、リアルなものと、幻想的なものを丁寧に繋ぎ、バラバラなものを固まりとしてバランス良くまとめると良いです。奈良原一高の写真集(空)を参考にすると良い。

5.作家 : 谷 明氏
 作品タイトル : 時の化石
 内容 : 展示作品は多視点・方向から撮影した画像やT.V.画面のシークエンス、対象場所に関係する過去のアーカイブイメージ等を各々、複数のレイヤーとして重層化したものです。重ねられたレイヤーは個人的パトスや空間概念に依ったアナログ画像処理を行う事で、重層化したイメージの奥に沈潜する対象の澱の様なイデアや場所(トポス)のオーラの様なイメージが浮かび上がって来ます。「写真」はそれが撮られた瞬間から、もはや時間の骸、過去のイメージを背負った遺物となって行きます。重ねたデジタルレイヤーをアナログ的に処理し、新たなイメージを創りだす作業は、あたかも何層もの地層(レイヤー)に覆われた地層を掘り起こし、地層の中に潜む過去の未知の生物の「化石」や遺物を発見する発掘作業に酷似していると言えます。       
※飯沢耕太郎さんのコメント :
素材としての写真は面白と思います。しかし、何をどう見せるかが重要です。これらの作品(集)で、何が言いたいかが分からない。何故、これらの作品(集)を作っているのかが、伝わらない。手法は面白いが、あれもこれも手を付けて拘りが弱い。熱量を感じない。自分は、何故これを作っているのかを考え、評論家を納得させる論理思考が欲しい。謙虚になられて、足りないものをプラスアルファして下さい。写真はこのままで良いので、いくつかのテーマに絞って、やるなら徹底的に作品(集)として取り組んで下さい。

6.作家 : 野田 光治氏
 作品タイトル : 赤/黒
 内容 : シャッターを押して「偶然の瞬間」を切り撮るのが写真。その写真を見た人が、「物語」を想像してもらえることができる作品。それが「アート」作品であると思っています。写真をはじめたころ、「赤を見かけたらシャッターを切れ!」と先輩からアドバイスを受けて以来、いつも視界のなかで赤を探している自分がいます。数年前、赤い傘を撮り始めたころに、渋谷で「ソールライター」の写真に出会って衝撃を受けました。気に入った場所で赤い傘を偶然に撮るのは非常に困難で至難の業です。各旅行先で妻に傘をさしてもらい。「もう一度」はなしとして、できる限り再現できない状況で撮影しています。今回は「赤いかさ」以外を白黒にして、見る人が写真に引き込まれる独特の世界を表現してアート性を高める試みをしてみました。
※飯沢耕太郎さんのコメント :
目標は、まず個展の開催ですね。作品としては、同じ距離感では無く、引いたもの、寄ったものがあり、主題との距離感が良く考えられている。作品(集)としてまとめる力を感じます。これに徹すること。そしてそれを丁寧に繋げる。文体が作り易いので、20から30枚にまとめると野田さんの世界観が表現できると思います。

以上

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